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(微分構造を)もたざるもの

これは日曜数学アドベント・カレンダー 2016 12 日目の記事です。

11 日目は伊藤那由多さんによる 巨大数(ふぃっしゅ数とは言っていない) でした。

本日のテーマは微分構造を持たない多様体を作ることです。有名な例としては [Kervaire] による 10 次元多様体の構成がありますが、本日は田村一郎先生による 8 次元多様体の構成を紹介します。同様の方法で 16 次元も作ることができますがそれは,原論[Tamura] を参考にしてください。

1. {S^4} 上の {S^3} bundle

{ \rho, \sigma : S^3 \to SO(4)} を次で与えます。

{ \rho(u)v = uvu^{-1} , \,\,\,
\sigma(u)v = uv  }

ここで,3 次元球面 {S^3} は 4 元数体を用いて, { S^3 = \left\{ x \in \mathbb{H} \mid \|x \| = 1 \right\} \subset \mathbb{H} } と考えています。

Fact1
homotopy 群  {\pi_3(SO(4)) \cong \mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z} } であり,{ \rho, \sigma } で生成される。

上の事実から、{ S^4 } 上の rank 4 の有向な vector bundle (upto-iso) が { \rho, \sigma} を用いて一意に表すことができることがわかります。

そこで { S^4 } 上の rank 4 vector bundle

{ \displaystyle
p_{m} :  E_m \to  S^4 }

{ m \rho + \sigma \in \pi_3(SO(4)) } で与えられるものとし、これ に付随する sphere bundle を { \xi_m }, disk bundle を{ \overline{\xi}_m} とします。

  • { \displaystyle
\xi_{m} :   S^3 \hookrightarrow B^7_{m} \xrightarrow{\pi_{m}} S^4 }
  • { \displaystyle
\overline{\xi}_{m} :   D^4 \hookrightarrow \overline{B}^8_{m} \xrightarrow{\overline{\pi}_{m}} S^4}

{ \partial \overline{B}^8_{m} = B^7_{m} } が成立していることに注意してください。

こいつらがどういう空間なのか少し考えてみます。

 {B^7_m, \overline{B}^8_m } はともに可微分多様体であり, { \displaystyle
B^7_m \underset{homeo}{\cong} S^7 } ,特に m = 0 のとき, { \displaystyle
B^7_0 \underset{diffeo}{\cong} S^7
} となります。

{ \overline{B}^8_{m}} の方はどうかというと, { \displaystyle
\overline{B}^8_m \underset{homotopy 同値}{\sim} S^4 }  が成立しています。

同相写像を通すことで、  {\pi_m : B^7_m \to S^4 } は homotopy 群  {\pi_7(S^4) } の元を定めます。

Fact2
{ \displaystyle
\pi_7(S^4) = \mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}/(12)
}

そこで,無限巡回群の生成元を { \nu } とし,有限巡回群の生成元を { \gamma } とする*1。この { \nu } は Hopf Fibration の homotopy class と一致しています。

さて、 { \xi_m } を homotopy fibration という立場で見てみましょう。すると

  • { \displaystyle
\xi_{m} :   S^3 \to S^7 \xrightarrow{\pi_{m}} S^4 }

と見えます。 (Quaternionic) Hopf Fibration に似ているとおもませんか?? ただし、fiber が { m \rho } でひねられています。すなわち、

Prop
{ \displaystyle
[ \pi_m ] = \nu  + m \gamma
}

多様体の構成

多様体の構成は恐ろしく簡単です。

{
M_m := \overline{B}^8_m \cup_{\varphi} D^8
}

ここで、 { \varphi : B^7_m \cong S^7 } を用いて、{ \partial \overline{B}^8_m = B^7_m \to S^7 } により境界を同一視しています。

これで完成です。あら簡単。

この m がある条件を満たすときに、微分構造をどうやっても持てません。

Thm
{ M_m }{ m(m+1) \not \equiv 0 \pmod 4} の時、微分構造を持ちえない

証明のラフスケッチ

結論から言うと homotopy 不変な値の違いを可微分な場合と比較することで示します。

まずは {M_m} を homotopy 同値で変形して、セル複体の構造を簡単にします。 すなわち、 前述の { \displaystyle
\overline{B}^8_m \sim S^4 } という homotopy 同値を用いると次 homotopy 同値が導けます。

 {
M \sim S^4 \cup_{h} D^8 \\
[h] = [ \pi_m ] = \nu + m \gamma \in \pi_7(S^4)
}

一方、次の定理が示せます。証明は原論文を参照してください。

Thm
M を 3-連結、{ H_4(M) = \mathbb{Z}}、境界のないコンパクトな 微分 多様体とする。
このとき、{ m(m+1) \equiv 0 \pmod 4} な m を用いて、M は { S^7 \cup_{g} D^8 } where { [g] = \nu + m\gamma \in \pi_7(S^4) } という homotopy 型を持つ

構成した {M_m} の cell structure から 3 連結であること、 { H_4(M_m) = Z} は明らかです。 よって、上の定理から m が条件 { m(m+1) \not \equiv 0 \pmod  4} を満たさない場合に可微分構造を持つことができないと結論付けることができます。

13 日目は integers_blog さんによる 日記 です。

参考文献 #

*1:J-準同型 { J: \pi_n(SO(r )  ) \to \pi_{n+r}(S^r) } を用いて { \nu = J(\sigma) , \,\, \gamma = J(\rho)} と書ける。